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迎え入れた織機

京都はいいなぁと思うのです。
古都の風情漂う美しい街並みに、歴史ある寺社仏閣、美味しいお店があるから?
もちろんそれらもありますが、だって、西陣があるじゃないですか。
減ったとはいえ、西陣には染織にまつわるお店や工房が集まり、専門の職人さんがいらっしゃいます。
なにか困ったり行き詰まったり、またはこんなものを探している、あれをやってみたい、と思い立ったときに、すぐ相談しに行ける場所が近くにあるって、心強いことです。

しかし、山梨県・北杜には「きつつき工房」があります。
「きつつき工房」は、松永祐一さんと華子さんご夫婦が営み、主に木製織機と電動紡ぎ機の製作と修理を行う工房です。
けれども、お二人の幅広い染織の知識と技術は織機や紡ぎ機だけにとどまらず、お人柄も相まって、全国から様々な方が訪ねてきたり、物や情報が集まってきます。

わたしもこれまで織機の修理をお願いしました。
また、織る道具のひとつに繊細な櫛のような竹筬(たけおさ)がありますが、竹筬を製作できる職人さんが今はほとんどおらず、新品を購入するならステンレス製となるなかで、すぐ使える中古の竹筬を譲っていただきました。
さらに「旅に持ち運べる織機が作れないか?」とわたしが夢想している話にまでお付き合いいただいている、ありがたい存在です。

「中古の織機を探している」ともお伝えしていたところ、松永さんを通して織物教室を縮小するという方から、奄美大島でつくられている大島紬の機(はた)と西陣の京機(きょうばた)を譲っていただくことができました。

これまでずっと織機1台でやってきたのですが、試作したり作業工程を調整するために、もう1台欲しいと思っていたのです。
教室できちんと織られ続けていた織機の状態は整い、大島紬用と京機の個性の違いもまた興味深く、織る人間は一人なんだけれど…と悩んだものの、この良縁に思い切って2台とも迎え入れることにしました。
そして、松永さんは二度に渡りわたしのアトリエに来て、運搬のために解体した織機を再度組み立ててくださいました。

これよりも少しまえに、家で置き場に困っているという織機も友人からお借りすることになり、いまアトリエには織機が4台と、一気に込み合うようになりました。
さてと、それぞれ稼働できるようにしなくては。
そのうち娘にも1台任せてみようかと思っていますが、猫たちの手も借りたいものです。

2018年9月10日 | Posted in 綴る |