綴る

音に浮かぶ

『音に浮かぶ』
石彫 上田亜矢子
詩布 藤井繭子
織られた譜(上田亜矢子選)/BACH 「Suite Ⅵ BWV1012 SARABAND」
和紙 加子由子

写真 平地勲
写真提供 Gallery SU

昨年12月、Gallery SUで開かれた石彫家 上田亜矢子さんの個展にて、コラボレーション作品として出品した「詩布」。
上田さんからのご依頼で織ったのは、彼女がよく聴き思い入れがある曲、BACH の「Suite Ⅵ BWV1012 SARABAND」の楽譜でした。

正確には「詩布」でなく、「譜布」ですね。
これまで詩布になかなか着手できず自分の中で眠らせていたのは、詩=言葉に慎重になりすぎて何を織るかを決められなかったことが大きいです。
そういう意味で今回のご依頼は、言葉にこだわりすぎていたわたしの殻を打ち破ってくれました。

和紙に墨で書くことは詩布の制作で重要な工程の1つですが、日本語だと言葉に敏感になり過ぎてしまうことがあるので、敢えてほとんど読むことができないフランスの詩人の原文を書写したことがありました。
楽譜を読めないわたしにとってそれに近く、「Suite Ⅵ BWV1012 SARABAND」を繰り返し流していたものの、聴こえているはずの曲はいつのまにか聴こえなくなり…無心で書写していました。
織った詩(譜)布には、五線譜の形跡もあらわれ、たしかに音を感じることができます。
そこに上田さんの石彫を置いてみると、彼女がイメージしながら形にしていったという、さざ波立つ水面の詩(譜)布にゆったりと浮かぶ舟のようでした。

これは着物となる反物を織っているときにも常に思うことですが、自分の織物は主張し過ぎず、着る人や上に置く物を引き立たせたいという思いがあります。
コラボレーションの難しさを感じていて、なかなか踏み出せなかったという上田さん。
会期後に「繭子さんが職人として徹してくださったから」と賛辞をいただきましたが、思い切って踏み出し、見事な舵とりだった上田亜矢子さんと、貴重な経験を得る機会をくださったGallery SUの山内彩子さんに心より感謝しています。

Date 2019-01-06 | Posted in 綴る |