Press "Enter" to skip to content

灯りのその先に―flameの照明

八ヶ岳南麓で家を探していたときに、いま暮らす場所に決めたのは、わが家にとって程よい大きさの土地だとか、移動が多い家人にとって交通の利便性が比較的よいとか、小学校が近いとか、諸事情を考慮したこともありますが、その家を遠くから引いて見たときのぽつんとした控えめな佇まいが、心に残ったことが大きかったように思います。
家からの眺めがよいのは嬉しいけれど、それよりも外から見える家が風景と調和しているかを大切にしているのかもしれません。
人も建物もできるだけ自然の中に馴染んで暮らしていくことが、わたしの希望です。

akarinosonosaki1
それは日中だけでなく、夜も同じです。
こちらに来てよかったと思っていることの一つは、夜が静かでしっかりと暗いこと。
暮らしはじめの頃は怖かったのですが、慣れてしまえば夜闇の静寂に安らぎを感じるほどです。
いっぽう家の中では、一日の疲れを癒し、家族で話したり、本を読んだり、手仕事をしたりと穏やかな時間を過ごしながら明日に備えます。
そんな時間を過ごすため、かといってじぶんたちの暮らしが山の暗闇をできるだけ壊したくないと選んだのが、オリジナル照明のガレージメーカー「flame」の照明です。
「照明が、明るさを得るためだけのものではなく、暮らしの中になくてはならない“豊かな灯り”であってほしい」というflameの想いに共感し、プロダクトのシンプルな美しさに惹かれました。
そして、照明位置や器具を決定しなくてはならない家の施工中に、わたしはひとりで図面を持って神戸・芦屋にあるflameのショールームへと向かったのでした。

光を見つけるためのお手伝いをしているというflame代表の神達謙一さん。
神達さんが北欧を旅したときに、家族との時間や何気ない日常の生活を慈しむ人々の暮らしにふれて“豊かさ”の本質を見つめ直すきっかけになったのだそうです。
家をつくっている途上で神達さんの話を伺うことができ、ますますこれからの新しい暮らしが楽しみに思えました。
さらにわたしが驚いたのは、わが家にとって本当に必要な光を神達さんは一緒に考えてくださったのですが、ある部分の照明をflameのプロダクトでないものを薦められたのです。
そのまなざしは熱く真剣で「空間を光がつくる。空間にとって最善を光を」とご提案される姿勢は一貫しています。
外の気温がぐんとさがり夜の時間が長くなるこれからの時期、flameの真鍮製シェードのやさしく深みがある光は、薪ストーブの炎の色とも相性がよく、家の中に暖かさを一段ともたらしてくれます。

akarinosonosaki2
ひとつひとつ灯りを消して眠りにつくころ、星空にとけ込むくらいの光がいい。
灯りのその先には、明日があるのだから―

2015年11月25日 | Posted in 綴る |