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染料棚

senryotana1
念願の染料棚をつくりました。
これまでは染料を結束したり段ボール箱に入れ、倉庫や軒下に点在させていたのですが、それらを一箇所にまとめ、棚に分類して一目でわかるようにしました。

幹材や枝、樹皮、堅果、乾燥した草…とさまざまな染料は、古いので15年以上まえのものもあります。
これまで幾度かの転居を繰り返しながら、ともに移動してきました。
家が狭小で庭もなかったときでも、段ボール箱に染料を詰めこんで、部屋の片隅に山積みにしていました。
われながら、よく持ち続けたなぁと感心してしまいます。

しかし、その理由は段ボール箱のなかにありました。
段ボール箱のなかには、染料の一番うえに小さなメモ紙が置いてあり「◯◯庵の刈安」「◯◯ちゃん家の梅」「◯◯さんからいただいた桜」「◯◯美術館の楊梅(ヤマモモ)」…と書かれていました。
その紙を見れば植物名や採取地に加え、どなたからどのような経緯でいただいたことまでも、すぐに思い出すことができます。
縁あってわたしのところにやってきてくれたものを、そう簡単に手放すことなんてできません。
かけがえのない染料が納まった棚を眺めながら思うのです。
わたしが染めようとしている色って一体なんなのだろうと。


「まゆちゃん、山桜あるけどいる?」「うん、いるいる!」なんていう友人との会話も自然になりました。
山麓の森や林に近いところに越してきたのに、人を介して染料がやってくるのはあまり変わらないのです。
それはきっと、わたしが巡り合わせのようなものを望んでいて、そこから色をあらわし制作したいと思っているからかもしれません。

つい先日も、林を所有しているお隣の方に「木を数本伐採したので薪に使いませんか?」と声をかけていただきました。
よろこんで取りに伺うと、そのうち1本の伐採した断面に鮮やかな黄色が見えました。
もしやと思い尋ねれば、やはり黄檗(きはだ)というではありませんか。
薪にするのはもったいない、大切に染めさせていただきます。
また一つ、棚に染料が加わりました。

2016年5月20日 | Posted in 綴る |