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綴る

4月1日


1996年4月1日は、月曜日でした。
その年の3月に大学を卒業したわたしは、念願かなって志村ふくみ先生の弟子となりました。
「おはようございます」と京都の工房の引き戸を開け一歩を踏出した、緊張と希望に満ちたあの瞬間のことは、今でも忘れません。

名ばかりの独立ではあったけれど、自ら鎌倉へ移り、古い戸建てを借りて、そこを自宅兼工房としました。
まだ荷物が片付いていなくても、この日から仕事をスタートさせたいという思いがあって、ちょうど近所で剪定していた金木犀の枝葉をいただいて糸を染めたのが、2000年4月1日でした。

その日から20年が経ちました。
今では、予定日よりも一ヶ月近く早産だった娘の誕生を祝う日となっています。
わたしの人生において、4月1日は特別な日なのです。

そして今年は、どのような状況でも訪れる春に、草木の芽吹きに、いつにも増して心が救われています。

2020年4月1日 | Posted in 綴る |

守ること 攻めること


娘一人、犬一匹、猫三匹とそれぞれに個性ある子たちは、わたしが守る存在。
「攻守」と言いますが、家族はもちろん、伝統工芸に携わる仕事においても、わたしは守ることの方が多いかもしれません。
そのような中でも、攻めることや挑むことも忘れたくない、と心に誓う元日です。

本年もよろしくお願い申し上げます

藤井繭子

2020年1月1日 | Posted in 綴る |

藍の島


藍の中で糸を泳がせていると 液面に玉虫色の泡が立っていく
これは藍がしっかり発酵して 元気な証拠である
海原に浮かぶ島のように見える泡は こちらの動きにどんどん形を変えていく
まるで藍と対話しているようだ

たしかに藍は生きている

2019年12月4日 | Posted in 綴る |

窓を開け放つ

古いスチール製の窓枠の窓には 網戸がついていないため 窓を全開にすることはほとんどない
でも アトリエにあるこの窓を 一年のうちでこの時ばかりは開け放つ
虫たちが入ってきたって構わない
金木犀の甘い香りを できるだけ取り込めるのならば

2019年10月3日 | Posted in 綴る |

草萌

「草萌」2019
素材 / 絹
染料 / 蕗 蓬 紫苑 白木蓮 他

2019年5月11日 | Posted in 綴る |

平成から令和へと歩を進めました。

それに伴う胸を打つ一連の行事のなかで、とくに凝視したのは、平成の天皇が「退位礼当日賢所大前の儀」で「黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)」をご着用になったお姿です。
重要な儀式で天皇だけが着用できる古式装束の色「黄櫨染」は、ウルシ科の櫨(はぜ)で黄色と熱帯地方原産の蘇芳(すおう)で赤を掛け合わせて、赤みのある落ちついた黄色を染めあげます。
当然のことながら、その時どきで色は多少異なるようですが、この度の「黄櫨染」は長きに渡って継承されてきたという背景も加味され、重みのある尊い色と拝見しました。
「日本の伝統」「受け継ぐこと」というものを感じ得ることができた元号の終わりと始まりでした。

2019年5月2日 | Posted in 綴る |

雪桜


昨晩の天気予報で、明日は雪になるかもしれないとのことでしたが、今朝起きてみたら想像以上の積雪でした。

2019年4月10日 | Posted in 綴る |

手書きのリズム

先日、この夏行うワークショップの打ち合わせのため山梨県立文学館へ行ってまいりました。
ワークショップについては、また改めてご案内します。

打ち合わせ後に、現在文学館で開催されている「手書きのリズム」展を鑑賞しました。
与謝野晶子、芥川龍之介、飯田蛇笏、中村星湖、津田青楓、武田泰淳などの直筆の軸や原稿、手紙が展示されています。
電子文字が主流になっている時代のなかで、手書き文字にあらわれる人となりや暮らしぶりを想像しながら、書面の息遣い(リズム)にわたしは心動かされます。

2019年3月14日 | Posted in 綴る |

葬儀を終えて


先月末に嫁ぎ先の母が、その10日後にはその夫である父が亡くなりました。
それぞれに病気療養中で、養護老人ホームに入所していた父と入院していた母を娘が春休みになったら見舞うために帰省しようと悠長に構えていたら、こんなに早く二人とも逝ってしまうとは—なにもできないままの死でした。

2019年3月10日 | Posted in 綴る |