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仕事についてのあれこれ

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なによりも透明感が大切だと思っていました。

くすんでいない澄んだ色は、どんな色であっても美しい。
草木で染めたとき、草木がもつ輝く色をちゃんと引き出せているかどうかを確かめるには、色に透明感があるかないかが物差しとなっています。
そう、その色のために水にこだわりたいというのが、山麓に拠点を移した理由のひとつでもありました。

子どもが生まれるまで、毎年恒例になっていた寒中に行う桜染めは、それぞれ微妙に色合いは異なるけれど、桜の花びら色に染められているのではないかと、ちょっぴり自信をもっていました。
ところが、今年に入り久しぶりに再開できた桜染めは少し様子が違いました。
これまでよりも複雑で、さまざまな経験を積んだからこそ滲みでるような色。
何が違うのか、ひとつ心あたりがあります。

普段は桜の枝を煎じ火を止めて、色素を抽出するために一晩置いてから染めているところを、今回は一晩置いたところで、家人がインフルエンザで高熱を出し看病に追われることになったのです。
二、三、四日と後ろ髪をひかれつつも、そのまま放置するしかありませんでした。
家人が復活したのを見届けて、恐る恐る煎じ液を掬ってみれば、色の濃度は増したようですが濁りはなく、桜餅を思い起こす香りも変わりなし「よし!これなら染めることができる」。
もしこれが寒冷地の冬でなかったら、数日(夏であれば一晩)で白濁し、悪臭を放っていたことでしょう。
思いがけない色は、いつも偶然の出来事からやってきます。
染めあげた糸を眺めながら、透明感とはまた違う熟成された色もいいものだなと。
今のわたしにしっくり落ち着くのは、四十半ばという年齢のせいもあるのでしょうか。

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昨秋にデンマークを旅したとき、ボーンホルム島で出逢った夫婦ともに彫金作家のPerさんかおりさん
「会ってみたら」と二人にコペンハーゲン在住のテキスタイル作家 Anneさんを紹介していただきました。
数日後の急なお願いにもかかわらず快く受けてくださり、Anneさんをはじめ何人かのクラフト作家で運営しているコペンハーゲンのこぢんまりしたギャラリーでお会いすることができました。
短い時間でしたが、それぞれにどんな仕事をしているか、どんなものを制作しているかを出し合いました。
素朴で穏やかなAnneさんがプリントしたリネンクロスは、日常のなかでユーモアやひらめきを与えてくれそうです。
そしてわたしも織った反物の端切れを見ていただくと「feminine」というAnneさんの声が聴こえました。

フェミニン―これまで意識して制作したことはなかったけれども、女性の反物を織ることがほとんどのわたしは、絹織物のやさしい光沢としなやかさに加え、纏った方の個性である美しさを引き出せるような“きもの”でありたいと心がけているので、そういうところがつながったのでしょうか。
じつのところ、自分でも女性のことは未知なところがあります。
だからこそ、それらしい色やデザインでごまかしたくない。
そのことをAnneさんともっとお話したかったけれど、時間と語学力が足りなかったのが残念です。

後日、反物を取り扱いいただいている青山八木の八木さんにその話をお伝えすると「甘い色や繊細さで女性っぽさを表現するのではなく、その反対側に潜む女性も見てみたいですね」という言葉をいただきました。
なんと難しい、けれどもわたしも見てみたいです。

2017年2月7日 | Posted in 綴る |