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トントンと淡々と


トントン トントン 
部屋に機の音だけが鳴り響く時間が、どれだけありがたく思えることでしょうか。

子どもが生まれるまえは、時間を気にすることなく好きなだけ織っていました。
続けたければ夜中であっても明かりを灯して、トントン トントンと。
けれども、今はそうはいきません。
これまであたりまえのように織っていた時間を確保するのは、そう簡単なことではないと痛感しています。
まもなく三歳になる娘が生まれてからは育児を優先させ、染める、織るという仕事が思うようにできないことに歯痒さを感じたこともありました。

なんとか仕事がしたいと、家人がいるときに子守りをお願いをしたり、子どもがお昼寝しているときや夜に寝静まってからそっと抜け出して仕事部屋にいったり、おんぶをしながら織ったりもしました。
ただ、切れ切れになってしまう時間のなかで、なかなか気持ちの切り替えもできず、とくにフルマラソンのような長丁場となる反物を織っていくことに苦労していました。

でもそういう状況も時間が解決してくれるものですね。
娘も母親と離れてものびのびと遊べるようにもなり、気持ちの切り替えにも熟れてきて、少しずつ心静かに織ることが保てるようになってきました。

トントント タンタント イマデキルコトヲ
機を織る音がそんな風にも聴こえてきます。
一方で、子どもを背負いながら織っていたときのずっしりとした重みが、なんだか懐かしくも思えるのでした。

2015年3月9日 | Posted in 綴る |